安重根~伊藤博文を暗殺した男 | 歴史サーチNEWS

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昨年(2004年)9月から韓国で
「多黙 安重根」
という映画が公開された。主演男優のユ・オソン氏は
「安重根義士の生涯を通じて人々がもう一度自分自身を
再確認するきっかけになればと思う。」
と語っている。また、スポーツ朝鮮
によると、日本でも人気の韓国人歌手BoAらがこの映画公開を機に安重根義士記念事業会に5000万ウォン寄付し「この映画を観て少しでも愛国心を持ってくれたらと思う」と語ったという。

この行動に対し「反日」活動としてネットの国粋主義者連中ががBoAをはじめとする韓国人アーティストを批判した。
ただし、この映画が作られる背景にある、反日という単純な言葉では片付けられない韓国の特殊な事情も考えなければならない。
前述したユ・オソン氏は
「安重根義士のことを外科医なのか、内科医なのかと聞く若者がいるという話しを聞いて開いた口が塞がりませんでした」
とも語っている。韓国において中学校では国史は必修であるものの高校では選択科目にすぎず、李舜臣とならぶ国民的英雄とされる安重根のことを詳しく知らない若者も増えているらしい。こうした側面から『多黙 安重根』は安重根が独立運動家だったという事実を伝え、歴史教育の重要さを伝えるメッセージがこめられているように思われる。また 韓国と北朝鮮の共通の偉人である安重根を描くことで、この映画を通じて南北和解のムード作りに少しでも役立ちたいという期待もあるようだ。

以上を考えてみると、安重根をめぐって反日と反韓国の単純な2項対立があるのではなく、韓国自身が安を義士と奉じなければいけない事情、特に朝鮮民族としてのアイデンティティを保持するための必死の努力が見え隠れする。
単に安重根を英雄視し、記念館までつくることを非難するのではなく、両国の事情を深く鑑みた上で歴史論争を行わねばならないのではないか?